サンバタウン リフォームものがたり ~前編~
名住が2011年に手がけた、名古屋市・円頓寺商店街にある「ブラジル音楽工房サンバタウン」のリフォーム着工日は、折しも東日本大震災が起こるその前月でした。
物件は築150年を超えると言われる古民家。使われている柱や梁は、古い寺社の廃材を再利用したものであると聞かされました。とするならば、それらの木はゆうに300年以上の時を経たものであると思われます。
失礼な書き方になりますが、20年近く空き家状態だったこの物件、画像からもおわかりのように、まさに「廃屋」に等しい老朽ぶりでした。壁は崩れ、窓は傾ぎ、屋根からは陽光が差し込んでいるという、何と申しますか、すさまじい状態です。この現場には「もう、彼しかいない」と、名住きってのエース級の大工を起用することにしました。
今だから言えることなのですが、震災発生後、住宅業界は資材の確保合戦(ぶっちゃけて書くとまさに「奪い合い」)でどうしようもない状況でした。特に木材・電設系の資材においては極めて入手困難な状態にあったようです。
あの頃日本中の人々がそう思っていたように、東北の復興は最優先に考えられなければならない。しかし、目の前のお客さま(以下「施主」)の物件の工期と予定を大幅に遅らせるわけにもいかない。
そうした末に、施主と一緒になって考え、出した結論は、「解体前の古材で使えるものはできるだけ再利用する。その他の資材は手に入る物を優先し、工期に間に合わせる」というものでした。
取り崩した角材や、剥がしたベニヤ板の一本一枚に至るまで、その強度に影響がない限りは大切に使って無駄にしない、それが施主ご自身も含めたこの現場での共通認識となったのです。
それにしても、解体が進むとともに驚きと感心の連続でした。これはその後の名住が担当する在来工法のリフォーム工事においてとても貴重な経験となったことは間違いありません。
特に思い出深いのはこの「かまど」です。これからここで営まれるであろう店舗は物販業なので使うこともないだろうと思われたのですが、施主は一目で惚れ込み「これは絶対に撤去しないでそのまま残しておいてほしい」とお願いされました。その後どうなったのでしょうか。
さあ、工事はまだ始まったばかりです。
(後編へつづく!)